「死んでしまいたい」… と、打ち明けられたらどうしますか?

丁度1年前の出来事でした。
自分の近しい人から「死んでしまいたい…」と、
電話越しに泣きながらの訴えを受けた事を、
今でも鮮明に覚えています。


私は社会福祉法人SHIPに入社し、障害福祉の仕事に携わり5年目になります。
ご利用者様からの自暴自棄相談や過剰服薬により病院への緊急搬送同行などは経験したことがありましたが、
身近で、とても大切な人から「死んでしまいたい…」と、訴えを受け
「何とかしなければ」「これはまずい!」と、冷静さを失うことがありました。


電話の内容で「死んでしまいたい…」と、いう「理由」は理解する事が出来ました。
新型コロナウイルスに関連し、以下の「課題」が生じたからです。
1・旦那様の収入が減ってしまった。
2・パート時間が少なくなり収入が減ってしまった。
3・長男の大学進学が決まった。
4・長男の大学入学費(理系の私立大学)が支払えない。
5・次男(中学2年生)が反抗期である。
6・次男の高校進学が悩みの種になっている。
7・旦那様・次男が体調を崩し、コロナに感染したのでは?と不安である。
8・万一コロナに感染してしまったら、ご近所様に合わせる顔が無い。
コロナウイルスに関する不安とライフイベントの変化によるものと理解。


「死んでしまいたい理由」を理解したうえで起こした行動は?
1・安全の確保に努めた
・経済的な理由による不安が大きいと考え、可能な範囲でのサポートが出来る事を約束した。
・旦那様・ご両親・サポート資源等に理解を得て精神的安らぎを確保した。


2・心と身体の休息に徹する事を促し、観察した
・パート職の休職を約束した。
・ご家族(旦那様・長男・次男)への休息理解を図った。
→結果的に5か月間休息に時間を費やすことになった。


3・医療機関との連携を図った
・精神科・心療内科の大半が「予約制」であり、急迫状態の方には受診の敷居が高い。
・自分が知り得る情報を元に「予約制が無く敷居の低い医療機関」を紹介した。
・旦那様に受診同行を依頼し受診に繋げた。
・結果、新型コロナウイルス不安による「うつ病」の診断が下りた。
・通院・服薬治療が開始になった。
1・2と同時進行で実施した。


4・心理教育に取組んだ
・心と身体のメカニズムを理解できるよう手紙で説明した。
・手紙の説明では理解を深めるのが困難と思い、マンガ本を2か月に1冊づつ送り読んで頂いた。
・自身で解決に近づけるようヒントを与え、考え行動できるよう設定した。
・遠方に住まれるご両親様へも、課題克服は本人と家族の課題であること(課題の分離)を伝えた。
・心配されるご両親様へも、電話・手紙を使用し「うつ病の理解」に努めた。
・心配されるご両親へも「うつ病」の理解を更に深める為、同じマンガ本を送った。
→本来支援提供において、近親者の支援提供は禁止されているが、本件はあくまで情報提供として実施している。
禁止の理由:個人的感情が支援に影響したり、近親者はキーパーソンとしての立場が必要であるため


「死んでしまいたい…」
・電話から1か月後:「寝れない、横になっても嫌な事を考えてしまう…」
・電話から2か月後:「お薬で眠れるよになったよ…」「少し安心した」
・電話から3か月後:「思考停止が治ってきた!」「長男が率先して洗濯をしてくれる!」
・電話から4か月後:「次男が買い出しに行ってくれる!」「両親に心配かけたから顔を見せに行きたい!」
・電話から5か月後:「本も読める、買い物も行ける、嬉しい!」
・電話から6か月後:「休職してたけど週2回3時間働かない?って言ってくれた」
・電話から1年後(現在):発症前よりパート日数を減らし、週3回の6時間勤務している。


私の在籍する社会福祉法人SHIPでは、内部研修の中で「自殺防止」という研修があります。
私自身を含め、自身の大切な方々が精神的不調に陥った際、
冷静に、「何が出来るか?」「何をすべきか?」を考え、学びにつなげて行きたいと思います。

1年前の出来事は正直「無我夢中」でした。
しかしながら、3年以上も前に上司から頂いた助言を元に購入した「マンガでやさしく分かるシリーズ」が、このような場面で役立つとは考えもしませんでした。

1冊1,500円。
大切な人へ3冊・ご両親へ3冊の計6冊で9,000円
9,000円で情報提供と普段の生活が手に入れられたのであれば
これほど安いものは無いと思います。


自分自身にとっても、支援者の学びの機会としても、大変貴重な経験をすることが出来ました。最後までお付き合い頂き、ありがとう御座いました。

エスプリドゥ サービス管理責任者 こばやし

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