【利用者インタビュー】「とにかく行動すること」それが一番のリハビリ!

社会福祉法人SHIPの「エスプリ・ドゥ」で、日々パンづくりに励んでおられるアイさん。

七年前の夜、就寝時に脳梗塞を発症、後遺症として高次脳機能障害を患った利用者様です。

主な症状は、軽度の右半身麻痺、吃音、記憶障害・・・

 

アイさんの過去から現在に至るまでの過程、これからの目標などのお話をうかがいました。

 

「20年の記憶」がごっそりなくなった・・・

――高次脳機能障害による記憶障害とは、具体的にどの程度の症状なのでしょうか?

 

アイさん

脳梗塞の後はいろんな記憶がなくなりました。

私は結婚していて、妻と双子の息子がいます。不妊治療でやっと授かった双子の男の子でした。

しかし、今の自分には彼らの小さい頃の記憶しかないのです。

脳梗塞になる前に残っている最後の記憶は、2~3歳くらいの双子の息子たちと遊んでいたことです。

脳梗塞を起こして病院で目を覚ますと、とっくに青年になった息子たちが目の前にいたのです。

息子たちは今、24歳なので、彼らと過ごした20年分の記憶がごっそりなくなったことになります。

 

 

 

――それは、とても衝撃的なことですね。

 

アイさん

はい。小さくて可愛かった息子たちが急に大人になっていたのでビックリしました。

 

 

――吃音についても伺います。たしかに、少し言葉が出にくそうなこともありますが、今は流暢に話せていますよね。

 

アイさん

脳梗塞の後の1年間は、まったく話せませんでした。

相手の人が言っていることは理解できても、自分が言葉を発することはできないので、もどかしい思いをしていました。

話せるようになったのはリハビリ施設に行ってからのことでした。

 

 

 

無我夢中のリハビリを経て、エスプリ・ドゥへ

――リハビリ施設とは、どのようなところですか?

 

アイさん

正確には覚えていないです。

たしか、1年半ほど入院して、退院後は脳卒中の患者を受け入れている東京都練馬区のリハビリ施設に入所していました。

そこで、発語のリハビリと、当時は麻痺もひどかったので、歩行や身体を動かすリハビリを受けました。

 

とにかく早く回復したい一心で、

話せるようになりたい!

歩きたい!

動きたい!

そう思って、無我夢中で訓練していました。

 

 

 

――その反骨精神でここまでの回復を果たされたのですね。 リハビリ施設にはどの位いらっしゃったのでしょうか?

 

アイさん

そこには1年いました。

その後、当時の相談支援のスタッフの人に「エスプリ・ドゥ」を紹介してもらって、ここに通所するようになりました。

 

 

――練馬区から、わざわざ江戸川区に引っ越してきたということでしょうか?

 

アイさん

はい。リハビリで症状は軽くなりましたが、障害があることに変わりはなく、また、家族からの「24時間必ず誰かがそばにいる環境で生活してほしい」という意向もありました。

そのため、作業ができる場所(エスプリ・ドゥ)と同時に、入居するグループホームも探すことになりました。

同じ社会福祉法人SHIP「サクレ江戸川」というグループホームを運営していたので、同時の利用がしやすいと思い、江戸川区に引っ越しました。

 

 

 

昔の自分に戻った感覚になる「パン作り」の仕事

――それで「エスプリ・ドゥ」に通うことになったのですね。 実際に利用してみていかがでしたか?

 

アイさん

「エスプリ・ドゥ」は、脳梗塞を発症した後で、はじめて働いた場所です。

もともと飲食関係で働いていたこともあって、パンづくりも好きでした。

「パンをもっと作りたい」という気持ちが、リハビリのモチベーションにつながっているような気がします。

パン生地をこねたり、触ったりしていると、病気の前の自分に戻れるような感覚になります。

 

 

 

――飲食関係での経験があったのですね! 具体的にはどのような仕事をされていたのですか?

 

アイさん

某飲食店のフランチャイズオーナーをしていました。

自分で売り上げを管理したり、従業員を指導したり。

あとは、お寿司屋さんや割烹料理店でも働いていたことがあります。

 

 

――現在、「エスプリ・ドゥ」では、どのような作業をされているのですか?

 

アイさん

主に、食パンを作ったり、菓子パンを作ったりしています。

食パンは山型、角食、具入り、すべての種類を任されて作っています。

 

 

 

――かなり幅広く活躍されていますね。ちなみに、苦手な作業などもあるのでしょうか?

 

アイさん

苦手というのはないです。

でも実は以前、甘食作りに挑戦したことがあるのですが、難しくて諦めてしまいました。

甘食の作り方には、生地を絞り袋に入れて、両手で絞って形をつくるという工程があるのですが、生地が硬くて思うようにキレイに作れませんでした。

麻痺が残っているせいで、生地を上手に絞り出せなくて断念してしまったのです。

それは今でも悔しく思っています。

 

 

考える前に行動、そして目標の実現へ

――悔しい経験も色々とされてきたのですね。 そんなアイさんにお聞きしたいのですが、もしこれから「エスプリ・ドゥ」で働こうかと悩んでいる人がいらっしゃったら、同じ利用者という立場として何を伝えたいですか?

 

アイさん

まずは行動することが大切だと思います。

悩んだり、考えたりする前に、とにかく足を運んで、一度、見学や体験をしに来てほしいです。

そのうえで、違うと思ったら、そのときは次の手をまた考えればいいと思います。

とにかく行動すること。

それが自分にとっては一番のリハビリになりました。

だから悩んでいる人にも、ぜひそうして欲しいです。

 

 

 

――最後に、今後のアイさんの目標を教えてください。

 

アイさん

やっぱり、就職することですね!

今は「エスプリ・ドゥ」でリハビリを兼ねてパン作りの経験を積んでいますが、いずれはそれを活かして飲食関係に就職したいです。

そこで家族に心配をかけないくらい回復して、バリバリ働きたいです。

そしてもう一度、家族と一緒に暮らしたいです。

 

 

 

アイさん、たくさんお話を聞かせていただきありがとうございました。

同じ境遇にある人たちの、励みにも、道しるべにもなる、とても貴重なお話でした!

そして、アイさんの目標が叶うことを願うとともに、その実現に向けて私たちもできる限りのサポートをさせてください!

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