「趣味の見つけ方」とは?
K:パン作りにご興味があるのですね!
C:ん~?以前は興味がありました…
K:それではCさんの「趣味」や「興味」のある事を聞かせて頂けますか?
C:「趣味?」「しゅみ…?」「趣味…ですかぁ?」
「…すみません!」「私、今趣味らしいものが見当たらないんです!」
※K:小林 / C:クライエント
これは「事業所見学後、質疑応答時の一コマ」です。
クライエントは3か月程前に「うつ病」の診断が下り、会社を辞め療養中の20代女性でした。
少しでも早く社会復帰を希望されましたが、先ずは生活習慣の安定・就労習慣の回復との事で、
「相談支援専門員」様とエスプリドゥを見学され、その後30分間お話を聴かせて頂きました。
C:ショッピングが好きでした、買い歩き・食べ歩きでストレスを発散していました。でも…
今は買い物に行くのも辛い、人込みに気が滅入る、電車やバスに乗るのが不安、洋服を選べない、大好きだった洋服も似合わないと思ってしまう、着てゆく洋服のコーディネートも決められず、何も決められず、何も考えられず、何も関心が持てない、楽しくないです、笑えないです、食事も美味しくないんです!友達や彼は「病は気から」と言うのですが、「気合や根性論で通用する次元じゃない」です…誰にも理解されないんです(涙)
K:それはとても辛いですね、大好きであった事が突然辛くなる、耐えがたい悲しみですよね。
C:そうなんです!買い物でストレスを発散してたのに!辛い仕事もリセット出来ていたのに…
何か辛い気を紛らわす物があれば…以前の買い物のように趣味に没頭できればいいのに…
そうだ!小林さんの趣味は何ですか?えっ!そんなに趣味があるんですか?どうしたら趣味が見つかりますか?趣味の見つけ方教えてください!と、捲し立てるように質問がありました。
K:私も、適応障害という疾患を患った事があります。ライフイベントの変化が重なり、周囲に相談できず自身で抱え込み精神疾患を患ってしまいました。当時は「相談なんて恥」とか思っていました、「いや~本当に大変でした」「周囲の方々へも本当にご心配とご迷惑を掛けてしまいました」「当時の記憶は絶対に忘れまい」と思っています。→小林の経緯 ただ、私の経験上の話になりますが、「今は趣味を見つけるのは難しいと思います」「しゅみ」とは、「愛好すること」で、「関心をもつこと」から始まるからです。「精神的な不調から周囲に関心を示すことが困難」になっているから今の時点では「無理して探す」に繋がると思います。
C:「ではどうすれば…」
K:「今処方されているお薬を継続摂取し、優先順位の高い事を少しづつ始める」事が最良だと思います。
そして事業所見学から約2か月後に電話がありました。私自身お話しした記憶も薄れていました…
C:「ご無沙汰しております小林さん!」「以前見学をさせて頂きましたCです!」
見学の後、思考が停止している頭で考えました。1週間程掛かってしまったけど、忘れないよう箇条書きにして…
そうしたら「やはり以前の様な販売の仕事に就きたいって分かったんです!」
K:「あ!ああ!あ~あぁ!」「それは良かった!」「さぞ大変な作業であったと思います!」
C:それで復帰の為には「対人との関わり」「ストレスとの付き合い方」などを深く学んだ方が良いと思い、
今は新小岩駅近くの「就労移行支援事業所」に通い始めました。
K:「良かった!」、自分で悩み、理解できた「真の目標」に向けて一歩踏み出せたのですね!
C:はい!それとお薬が効いてきたのか?思考停止が収まってきました!私、嬉しくてうれしくて!
実は、一向に良くならないので、先生を疑い薬を中断した時期がありました。
でも、見学の際、ご自身の経験と根拠のある説明を伺えたので「理解してくれる方がいた!」と安心出来ました。
今では「あれも!これもやりたい!」と、考える事がありますが、「無理せず優先順位を考え」取り組んでいます。「やりたい事を箇条書き」にして、暇な時間に少しづつ試してみよう!と…
C:「小林さん!」「不思議な事が1つあって…」
以前は洋服を買うのが趣味でした、ネットショッピングも。後から送られてくる請求書に驚くなんて事も…
でも、今のやりたい事リストに「洋服を買う!」が入らないんです。確かにファッションに関心はありますし、
周囲の方より身ぎれいにしたいと思うのですが、なぜでしょうか?
K:う~ん…
「実は趣味でなく、気持ちを紛らわす為にお手軽であったからではないでしょうか?…」
今のやりたい事リストに入っているのは、純粋に自身にとって関心がある事で、ファッションは「周囲より身ぎれい」ですよね、「関心が自分軸でなく他人軸」だからじゃないでしょうか?
K:趣味の見つけ方って、
「自己選択!」「自己決定!」「自己責任!」そして「自己満足‼」
それら全てが含まれていることであると思います。
「自分」で選んだ!「自分」で決めた!「自分」の責任だ!「自分」のご褒美になった!
全てが「自分軸」、それが自分にとっての本当の趣味ではないでしょうか?… 違うかな?…
C:なるほど!趣味って深いですね‼(笑)
そうしてCさんは目標に掲げた「販売の仕事に就く!」達成に向けて活動されています。
皆様の「趣味は何ですか?」趣味活動は「ストレスコーピング」の1つであると言われます。
「ストレスを軽減するため!」「ストレスを解消するため!」目的は様々であると思いますが、
忘れてはいけない事の一つとして「全て自分軸」である事。
これが欠けていると強度のストレス反応が生じた際に堤防が決壊してしまいます。
「思考停止」「考えがまとまらない」「抑うつ気分」や「希死念慮」が生じたら決壊のサイン。
「うつ病」の自殺率はおよそ15%と高く、とても注意が必要です。
サインが発動する前に今一度自身の「趣味」について考えてみるのはいかがでしょうか?
私はこの法人に入職後「精神保健福祉士」を取得しました。
「精神保健福祉士」とは、社会福祉学に依拠した専門職であり、ソーシャルワークの価値と理念そして理論に基づき、「全ての人が人間としての尊厳を有し、価値ある存在であり、平等である事を深く認識」し、「社会福祉の推進とサービス利用者の自己実現を目指す」とあります。
組織や所属は違えど「自己実現」に向かって進む彼女をこれからも応援したいと思います。
エスプリドゥ
サービス管理責任者 小林 重昭